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駒形どぜう どじょう料理の老舗

命懸けのこだわり

「一杯300円のどぜう汁に命懸けてんです。まぁ、飲んでってぇ下さいよ」。いきなりの江戸弁で快く迎えてくれたのは、駒形どぜう六代目・越後屋助七さん。「パンパン!」と手を叩き厨房に合図を送ると、さっそく熱々のどぜう汁が運ばれてきました。この一杯で白いご飯をいただくのが大好きという六代目にとって、どぜう汁は「ご家庭での再現は無理」と言い切るこだわりの一品です。調理を許されているのはわずかに数名。具材の調達にいたっては、ごぼう、ねぎ、そしてどじょうまで、作れるものは何でもみずから生産に携わるという熱の入れよう。ところが、「どーしても自分じゃ作れないものがある」。それは・・・

入る前から気持ちをそそられる店構え。江戸を感じるなら博物館より駒形どぜうへ。
「どじょうは肌にいいんですから、女性は食べた方がいいねぇ」とツヤ肌を見せてくれる六代目・助七さん。

江戸時代からのお付き合い

「今じゃぁ、取引先でウチより古いのは味噌屋さんだけ。これからもお願いしますよ」。笑顔の中にも真剣さをにじませる六代目。それもそのはず、助七さんが唯一作れないとおっしゃるのは、どぜう汁に使う江戸甘味噌なのです。「この味噌でなくっちゃウチの味は出ない」と、1801年の創業以来、一貫して同じ味噌屋の江戸甘を使い続ける駒形どぜう。最近では、お土産として江戸甘の販売にも一役買って下さっています。長年の信頼と実績、そしてその都度注がれる当主の厳しい目が、どぜう汁の味のみならず、いち取引先に過ぎない味噌屋の伝統までをも守ってくれているのでは…。そんな感慨を抱いたのも瞬間、「製造中止になっちゃぁ困るんでね、こっちも必死よ」と、やはり最後は江戸っ子のカラリとした笑いで落着。

どぜう汁の調理を任されている須藤稔さん。汁をよそったお椀を回して“とろみ”を確認。
駒形のどぜう汁は必ず沸騰させるというから驚き。味噌料理のタブーもここでは秘技。

老舗は文化とともに

駒形どぜうには三つの家訓があります。それは、〈一つ、丸※1を商うべし〉〈一つ、のれんを外に出すべからず〉〈一つ、武道すべからず〉。ところが「今守ってるのは三っつ目だけだね」。照れ笑いを浮かべる六代目ですが、もちろん破るにはそれなりの理由があります。「老舗って言ったって、それだけで弱肉強食のこの世界を生き残れるもんじゃありませんよ。時代とともに変わっていかないと」。反面、老舗としての意気込みも当然お持ちです。それは文化を持つということ。参勤交代時の名残ある店構え※2、所縁の文豪の歌碑、紺地に白抜きの“どぜう”の三文字・・・などなど、駒形にはそれだけで語れるいわれのあるものばかり。もちろん、どぜう汁の味も駒形に伝わる文化の一つです。六代目は言います。「使い捨てのカップで300円のコーヒーを飲むなら、ウチでどぜう汁飲んでって下さいよ」。駒形のどぜう汁は一脚一万五千円の塗椀によそわれてきます。これぞ老舗の底力なり。

冷めても上澄みができない自慢のどぜう汁。値が高騰しようともネギは大盛りが駒形の決まり。
助七さん曰く「どじょうは庶民の食べ物。かしこまらず寄ってって下さい」。

※1)骨やワタを取り除いた、普通の魚で言う“ひらき”に対し、包丁を入れていないまさに丸のままのどじょうのこと。特有の苦味がありますが、柔らかく煮てあるので骨は気になりません。

※2)参勤交代の際、二階からお殿様を見下ろすことはまかりならんと窓を作ることが許されなかったそうです。今でも駒形どぜうの江戸通りに面した二階部分には窓がありません。

駒形どぜう

〒111-0043 東京都台東区駒形1-7-12
TEL. 03-3842-4001
営業時間:11:00〜21:00
定休日:年中無休
http://www.dozeu.co.jp/
〈旅のおまけ〉
駒形どぜう入口の引き戸には、開け閉めするお客様の手で自然に開いてしまったという穴が。こんなところにも老舗の風格を感じることができます。



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